経営戦略論
VRIO分析は企業の経営資源やケイパビリティの強み・弱みを分析するフレームワークです。アメリカの経営学者 Jay B. Barney が発案・提唱しました。企業が所有する経営資源をValue(価値)、Rarity(希少性)、Inimitability(模倣困難性)、Organization(組織)の4つの視点から評価することで、企業の競争優位性を明らかにします。
「企業が保有する経営資源やケイパビリティは、その企業が外部環境における脅威や機会に適応することを可能にするか」。これが経済価値に対する問いです。企業がそのリソースを活用することによって、外部環境の機会をうまくとらえ、脅威を無力化できるのであれば、その経営資源やケイパビリティは強みとなります。
「その経営資源を現在コントロールしているのは、ごく少数の競合企業だろうか」。これが希少性に対する問いです。つまり、経営資源やケイパビリティが経済価値を持つとしても、それを数多くの競合企業が保有しているのであれば、競争優位の源泉とはなりません。競争均衡の源泉となります。経営資源やケイパビリティに経済価値があり、それはごく少数の企業しか保有していないのであれば、競争優位の源泉となり得ます。
「その経営資源を保有していない企業は、その経営資源を獲得あるいは開発する際にコスト上の不利に直面するだろうか」。これが模倣困難性に対する問いです。価値があり、かつ稀少な経営資源は、競争優位の源泉となり先行者優位を獲得できます。しかし、競合他社が容易に模倣できるものであれば追随されるのは時間の問題で、競争優位は一時的なものに留まります。ここで、競合他社がその経営資源を獲得する際、コスト上の劣位にある場合は持続的な競争優位の源泉となり得えます。
「模倣」には2つの形態があります。「直接的模倣」と「代替による模倣」です。前者はその経営資源を、競合他社が直接そのまま複製しようとするケースです。模倣する際にコスト上の不利になければ、競合他社はその経営資源を自前で用意しようとするでしょう。これが直接的模倣です。一方、後者は別の経営資源で代替しようとするケースです。例えば、優れた人的コミュニケーション能力を経営情報システムで置き換えてしまう場合です。同じ効果を発揮するなら、双方は互いに代替が効く経営資源ということになります。このように、模倣が容易であればその経営資源は一時的な競争優位の源泉に留まります。
最後に、これらの要件を満たした優れた経営資源は、組織的に活用できる仕組みがあるかを問います。「企業が保有する、価値があり稀少で模倣コストの大きい経営資源を活用するために、組織的な方針や手続きが整っているだろうか」。この問いが調整項目として働きます。つまり、競争優位性を真に実現するためには、経営資源やケイパビリティを十分に活用できるよう組織されている必要があります。せっかく優れた経営資源であっても、それを何一つとして活かせる仕組みがその企業に備わっていなければ、「ただ保有しているだけ」の宝の持ち腐れとなり、競争優位性を発揮することはできません。持続的な競争優位の源泉とするためには、それを活かせる組織的能力が必要となります。
VRIO分析は4つの問いを必ずV→R→I→Oの順番に評価します。SWOT分析等で抽出した自社の強みに対し、それが単なる強みか、あるいは競争優位性の源泉となり得る強みか、VRIO分析ではより深く掘り下げて明らかにします。業績が伸びている企業は必ず自社の強みを正しく認識し、環境変化に適応した的確な事業戦略を展開しています。経営資源を最大限活用できる体制を構築し、競争優位性を真に実現できる強い企業体質をつくり上げることが重要です。