働き方改革
40〜50代の賃金上昇と転職市場の変化に対応する中小企業の成長戦略

40〜50代の賃金上昇と転職市場の変化に対応する中小企業の成長戦略

 近年、40~50代の賃金上昇が顕著になってきました。特に転職市場において、これまで主に20~30代に集中していた賃金の上昇が40~50代にも波及しています。この背景にあるのは、就職氷河期世代のキャリア停滞や管理職の人材不足です。

 大企業では役職定年後に収入が減少することが多く、これを機に転職を選ぶミドル層が増えています。また、スタートアップ企業は経験豊富な中堅層を高く評価し、積極的に採用を進めています。特に成長段階にあるスタートアップでは、経営や財務のスキルを持つ人材が求められており、年収提示額も上昇傾向にあります。

 賃金上昇は2024年春闘においても広がりを見せており、若年層だけでなく中堅層にも人材不足が影響しています。政府もリスキリング(学び直し)を支援し、幅広い年齢層でのキャリア形成を支援しています。こうした賃上げは個人消費の改善にもつながる可能性があり、経済全体への波及効果が期待されています。

中小企業が今後取るべき方向性

 中小企業にとっても、40~50代のミドル層の重要性は増しています。以下の3つの方向性を検討することが、今後の成長に繋がるでしょう。

  1. 中堅層の採用と活用
     大企業やスタートアップ同様、中小企業も40~50代の経験豊富な人材の活用を積極的に進めるべきです。特に、管理職や専門知識を持つミドル層は、事業の安定化や成長に欠かせない存在となります。柔軟な働き方や報酬制度を導入し、この世代の魅力を最大限に引き出す環境を整えることが重要です。
  2. リスキリング支援の強化
     政府がリスキリングを支援していることを活用し、中小企業も従業員の再教育やスキルアップの支援を強化することが必要です。特に、デジタル技術や経営ノウハウの習得をサポートすることで、組織全体の競争力を高めることが期待できます。
  3. 給与体系の見直しと柔軟な労働環境の提供
     賃金上昇が全世代に広がる中で、中小企業も競争力を維持するために、給与体系の見直しが不可欠です。特に、優秀な人材の引き留めや採用には、業界水準に見合った給与を提供することが求められます。また、フレックスタイムやリモートワークなど、柔軟な労働環境を整備することが従業員の満足度向上に寄与するでしょう。

 これらの取り組みを通じて、中小企業は40~50代のミドル層を戦略的に活用し、経営の安定と成長を実現できるでしょう。

出典:日本経済新聞 2024年10月12日

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